「わりぃイルーゾォ。妊娠した。」
「…はあ?」
朝一番の一言。
まるで、今日出掛けるからーと同じくらいの勢いで
ものすごい一言を
ホルマジオは、言い放った。
「赤ちゃんできたんだよ。」
チームは、本気の恋愛は禁止。
なぜなら、恋人ができれば
当然死にたくなくなる
子供が産まれてしまえば
死んではいけなくなる。
その掟を破ってイルーゾォは
ホルマジオと一緒に暮らしていた。
「…。」
腹はそれほど大きくない。
ホルマジオのペタンコだった腹が
ほんの少し膨れただけだ
「な…なんでわかったんだ。全然外からだとわからないぞ。
やっぱり、わかるのか?赤ちゃんが出来たって」
やはり、体の中にもう一つの命があれば
気づくものなのか
それとも、夢のお告げが来るのだろうか
イルーゾォは必死に考えた
そう、彼は、ツワリというものがまだ何となくしかわかってないようだった
卵子と精子のうんぬんかんぬんは
理解しているが
バーちゃんの知恵袋は残念ながら理解していないのだ
彼は、女は良く吐いて
だいたい、腹を痛がってて
柑橘類が好き
だと思っているのである。
「へ?いや…医者に行ったけど
その前にツワリとかあるし…」
「つわり…。」
だいたい日常生活は鏡の中で
女とは全然かかわらない
そんな生活をしているイルーゾォは
女のこと、その前に一般常識がかけてるのだ
しかし、本は読むので
日常生活には、関係ない
知識は豊富だ。
ただ、ツワリとか女のうんたらかんたらには
余り興味がない
あくまで、ホルマジオに興味があるだけなのだ。
「…まあ、よくわからないが…よしとしよう。」
なにをよしにしたのかわからないが
イルーゾォは、何かを理解した
そして
理解して怒鳴った
「ななな!?何だって!」
「妊娠したって言ってるじゃん。」
ホルマジオは、少し悲しそうな顔をした
次言う言葉がわかってしまったから
しかし、イルーゾォは
まったくもって意味のわからないことを呟いた
「ふふふふ…ふふ!これで奴に差がついたぞ!」
暗殺チームは、恋愛禁止
だが、「ばれなければ良し」という、暗黙のルールがある。
昔々、まだリゾットがリーダーをしていなかったころ
ホルマジオとリゾットは、いいかんじだったらしい。
しかし、イルーゾォの出現により
リゾットの影は薄くなり
髪も薄くなり
そして、胃の壁も薄くなった。
ホルマジオは、弟のようなイルーゾォの世話をやき、
一人でもやって行ける長男は、
放置気味になったのだ。
しかし、リゾットは、「過去」を武器にし、ホルマジオにしがみついていた。
イルーゾォ的には、そのしぶとい中年を早く振り落とし
ホルマジオを独占したいと考えていた。
まさに、これは神が与えたチャンス!
とイルーゾォは、考えていた。
もはや、彼に、
チームの掟なぞ関係がなかった。
「つまり、これで俺は、正式に旦那だ!」
イルーゾォは、小躍りをしながらいった。
ホルマジオには、意味がわからない。
でも、旦那と言ってるということは…
ホルマジオすこしだけ
いい意味の衝撃を受けた
しかし、彼女の後ろに
もうひとり衝撃を受けた奴がいた
…彼の胃に穴があいた。